都心の電車で急病人が出ない日はない

それは 宝くじのようなもの

あるいは 

ふわふわと浮かび どこかで必ず破裂する 

金魚風船のようなもの

蒸し暑い夏の夕暮れに破裂する

パアン

駅員がふたり あわてて走って行った

ひとりの駅員は車いすを抱えて往復していった

そして

急病人の介護のため しばらく停車しますと 車掌のアナウンスがあった

ああ 

いま 誰かの上で その風船がはじけた

都心には決まった数の風船が浮かび

決まった数だけ犠牲になるのね

バアン!

それは

朝の電車で胃痛を押さえていた わたしだったかもしれない

朝の電車で頭痛をこらえていた あなただったかもしれない

ふあん・・・

ラッシュの優先席前で ふと網棚を見ると

おや しおれかかった金魚風船が浮かんでいる

それはゆっくりと泳ぎはじめ

やがて わたしの頬の産毛をかすめた

 ” あなた ほんとは すきなんでしょう ”

そんなふうに 呟いた

次は わたしかもしれない

いよいよ くるのかもしれない

ひとりきりでは生きられない胃が「もたれている」午後

もたれるって こわれるに 似ているね

駅員の膝の上での嘔吐

駅員の太腿の上での嘔吐

黒い制服を汚すって どんな どんな こころもちでしょうね

ああ どうか これ以上具合悪くなりませんように

願いながらわたしは目を閉じる

風船の尾びれの波紋の風を

少しだけ

よけながら

今日は仕事でした、眠くてたいへんでした・・・。

そんな日もありますね。

朝からの仕事はつらひ・・・・おやすみなさひ・・・・。